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フッ素ってなぁーに?
フッ素は、むし歯を防ぐ最も効果のある物質です。
フッ素は、下の図のように食品、水、土壌といった自然界に広く存在している自然の栄養(ミネラル)です。 フッ素は自然の栄養素(ミネラル)として、動物・植物など全ての生き物に含まれ、自然界では地球を構成している約90種類の元素のうち12番目に多い元素です。また、フッ素は自然の海水中に1.3ppm含まれており、これまでの全ての生物の進化を支えてきた大切な物質でもあります。このように、フッ素は、特別なものではなく、私たちの身の周りのどこにでもある普通の物質であり、健康な歯や骨のために必要な栄養(ミネラル)の一つなのです。 ※ppmとは |
![]() 大分県歯科医師会「フッ素がいいのは『なしか』」より |
フッ素の安全性について
フッ素の摂取と安全性・効果については、50年以上にもわたる専門学会や専門委員会、政府、各種の国際機関および国際的な保健機関の特別協議会において幾度となく再評価され、証明されています。
現在では世界の150以上の保健関連団体がフッ素の安全性・効果を基にその利用を推奨しており、日本においても、日本歯科医学会・日本口腔衛生学会・日本歯科医師会・厚生労働省などが、むし歯予防のためのフッ化物応用の安全性を保証しています。そして、厚生労働省が進めている「健康日本21」の政策の中にもフッ素の利用が盛り込まれています。このように、世界ではもちろん日本においても、むし歯予防にフッ素を用いることは他のいろいろな予防法に比べ、最も有効かつ安全・確実な方法として推奨されています。
フッ素利用を推奨している主な機関(日本)
厚生労働省・日本歯科医師会・日本歯科医学会・日本口腔衛生学会
フッ素利用を推奨している主な機関(世界)
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フッ素の毒性について
フッ素は自然界に広く存在し、アメリカなどでは身体にとって必須のものと考えられています。むし歯予防のために局所応用する場合、投与量・方法が正しければ安全で効果的ですが、誤った方法で使用すると安全な物質でも害が生じます。
急性中毒
フッ化物は適量ではむし歯予防に役立ちますが、一度に過剰摂取すると急性中毒を起こします。症状としては、悪心・嘔吐などが考えられます。見込み中毒量は体重1kg当たりフッ素量2mg(フッ化ナトリウム3.7mg)です。
4~5歳児(標準体重20kg)の見込み中毒量はフッ素量40mg
- フッ化物洗口(毎日法:フッ素濃度225ppmの場合) 洗口液約180ml(18回分)を一度に飲み込んだ場合に相当
- フッ化物洗口(週1回法:フッ素濃度900ppmの場合) 洗口液約45ml(4.5回分)を一度に飲み込んだ場合に相当
しかし、洗口液180mlを一度に飲み込むことは現実的ではなく、実際の事故例は現在のところありません。また、フッ化物歯面塗布法は専門家がする方法であり、問題ありません。
局所的応用法では過剰摂取になることはありません。
京都府歯科医師会「フッ素でむし歯予防」より
慢性中毒
慢性中毒には、歯牙フッ素症(斑状歯)と骨のフッ素症(骨硬化症)が考えられます。歯牙フッ素症は、歯の形成される時期(生後~7,8歳)に2ppm以上のフッ素を含む飲料水を継続的に摂取した人にみられるエナメル質形成不全症です。軽度ではエナメル質に境界不明瞭の白斑・白濁などを生じ、重症になるとエナメル質に小陥没部がみられ、外来性の色素が沈着することにより褐色などを呈するようになります。また、8ppm以上のフッ素を含む飲料水を20年以上摂取すると、成人の10~15%に軽度の骨硬化症が発症するといわれています。
口の中に残るフッ素の量は?
- フッ化物洗口(毎日法:フッ素濃度225ppmの場合) 0.5mg以下
- フッ化物洗口(週1回法:フッ素濃度900ppmの場合) 1~1.5mg
いずれも毎日飲み込むわけではないので、慢性中毒の心配はありません。
通常むし歯予防に用いるフッ化物の量では、慢性中毒の危険性はありません。
京都府歯科医師会「フッ素でむし歯予防」より
フッ化物の代謝
水や食物の摂取のより吸収されたフッ素は、成人で90%以上、子どもでは骨の成長期にあるためフッ素が骨に一過性に沈着し、60~70%が尿中へ排泄されます。
京都府歯科医師会「フッ素でむし歯予防」
フッ素のむし歯予防の作用機序
むし歯のメカニズムとフッ素の働き
(1)細菌の増殖・酸の発生砂糖を摂取すると、口内の細菌が増殖し、酸が発生します。 |
(2)脱灰酸により、エナメル質からリン・カルシウムが失われます。この現象を「脱灰」といいます。 |
(3)う触脱灰が進行すると、エナメル質に穴があき、う触(むし歯)となります。 |
う触予防のメカニズム
脱灰の段階で、リン・カルシウムを補充すれば、歯は修復されます(再石灰化)。脱灰と再石灰化のバランスが均衡していれば、う触は予防できるのです。フッ素は、細菌の活動を抑制し歯質の再石灰化を促進するので、う触予防に効果的です。
福井県歯科医師会「歯科健康教室の達人」より
フッ化物の応用方法
全身的応用法
- 上水道へのフッ化物添加(フロリデーション)
局所的応用法
分類 | 方法 | 実施場所 |
---|---|---|
1)プロフェッショナル・ケア | フッ化物歯面塗布法(綿球塗布法、トレー法、イオン導入法) | 歯科医院 保健センターなど |
2)パブリック・ケア | フッ化物洗口法 | 幼稚園、保育園、小学校、中学校 |
3)ホーム・ケア | フッ化物洗口法、フッ化物配合歯磨剤、フッ化物溶液スプレー | 家庭 |
フッ化物歯面塗布法(1)綿球塗布法
(a)歯面清掃 |
(b)簡易防湿と歯面乾燥 |
(c)フッ化物の塗布 |
福井県歯科医師会「歯科健康教室の達人」より
フッ化物歯面塗布法(2)トレー法
(a)トレーの選択・適合 |
(b)塗布紙への薬液の浸潤 |
(c)トレーの装着 |
福井県歯科医師会「歯科健康教室の達人」より
フッ化物歯面塗布法(3)イオン導入法
写真の様な機械を使って塗ります。
福井県歯科医師会「歯科健康教室の達人」より
フッ化物洗口の薬剤
フッ化物のむし歯予防効果
フッ素は、なぜむし歯を予防することができるのでしょうか?フッ素の効果は次の3つです。
再石灰化の促進
テレビCMでおなじみの再石灰化。歯は、むし歯菌が出す酸による脱灰によって歯の表面が溶かされ、むし歯になります。しかし、唾液や歯垢にフッ素があると、その溶かされた歯の表面は再び修復されて、もとの健康な歯を取り戻すことができます。フッ素はその再石灰化作用を速め、強化する働きがあります。
歯の質の強化
フッ素が歯に作用すると、歯の表面のエナメル質の結晶が安定し、むし歯菌の出す酸に対する抵抗力を強めます。
むし歯菌の酵素抑制
フッ素はむし歯菌が酸をつくるのに必要とする酵素に作用して、その働きを妨げます。
フッ素によるむし歯予防効果は、フッ素の応用方法によって異なります。水道水フッ化物濃度適正化(水道水フッ素化)やフッ化物洗口法(フッ素洗口)は、予防率が50~60%と高く、大きなむし歯予防の効果を期待することができます。50%の予防率というのは、むし歯を半分に減らす効果があるということです。
大分県歯科医師会「フッ素がいいのは『なしか』」より(改)